偽物というと毛嫌いされる方がおられますが、なかなかどうして出来が良い物が多いのです。
刀が武士社会で褒美の代わりになっていた時代はもとより現代においても数多くの偽物師が
日夜、如何にして愛刀家を巧妙に騙そうかと切磋琢磨されておられます。
私はそんな方々に敬意を表し是非出来の良い偽物を適正な価格でお客様が買えるように
その錬金術の一端を伝授しようと自身偽物を集めては日夜、研究に励んでおります。
まずは眉につばをしっかりべたべたと付けてから読み始めて下さいませ。
良い偽物を買うときに是非とも注意しなければいけない点とは何なのでしょうか。
基本的には以下の三点を必ず実行されることだと思います。
1. いかなる鑑定書も妄信しないこと。でも信頼できる刀剣商は信じてください。
2. できるだけ初見では刀身の上部を真剣に見ないこと。光物を先に見て惚れてしまうと
真偽の見分けができません。
しかし刀工の時代の見分けをするためには刀姿は重要ですから忘れないようにしてください。
3. 最後に必ず茎を見ること。茎をあまり真剣に見ると場合によってはお店の方が
怒りをあらわにされますからご注意ください。
実は、ここにこそ皆様は元より刀剣商すら欺く巧妙な偽物師のノウハウの大半が
ひた隠しにされています。
ですから良い偽物を買うために是非ともお伝えしたいのは茎の見方に尽きます。
以下に列挙するのは茎を見る時の大まかな注意点ですので記憶の片隅に留めて
刀をご覧になるときにはちょっと思い出して下さい。
ご注意:
以下の条件に当てはまるからといって、しったかをしてお店の方に言ってはいけません。
出入り禁止になると折角の出来の良い偽物を手に入れる機会を逃しますからね。
1. 時代大磨上げ無銘は刃区に注意すること。
刃区に焼落としがある場合は現代刀などを使って加工している場合が多い。
更に現代刀を使った生無銘大磨上は指し表と指し裏の茎の削り方が対称になっている物が多い。

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上の中心の刃区部分(黄色の○部分)をご覧下さい。
中心の目釘の穴から判断する限りかなりの磨上が施されてきているはすですが
実際には刃区の焼き落しと研ぎダマリから判断する限りまったくの生中心であることがわかります。
そうです、磨上などではなく目釘穴を増やし中心を削りなおすなどの加工をして
いかにも時代の磨上であるという体裁を取っているに過ぎません。
また左の写真をご覧下さい。生中心は中心尻から刀身を眺めた場合にも鎬筋の高さが左右で
だいたい同じくらいに
なっていることが多いので判断がつきます。
実際の大磨上の刀をご覧頂くとよくわかるのですが磨上を施すと中心の鎬筋は刀身の加工上、
決して同じ位置と高さにはできません。しかし本物らしく良い時代の錆色は出しています。 |
2. 在銘偽物は錆際が一直線になっている物が多い。現代刀、新々刀などを使っている場合に
結構多く当てはまりますので区側の錆際ががきっちり線を引いたように見えたら要注意です。
現代は銘振りだけでは判断が難しいほど銘切りは上手になっています。
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左の中心の錆際部分(黄色の○部分)をご覧下さい。
一直線になっているのがおわかりになると思います。
これは駄目ですのでお忘れなく。
ですが下手な砥師さんが不注意で時折こんな砥ぎをいたします。 |
錆際の見極め方をもう少し詳しくご説明いたします。(11/27追記)
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左の写真はなかなか良い錆色をしている時代偽物の
新刀の茎ですが錆際がきれいに一直線になっています。
茎の錆が一見して古そうでもこれを正真として買っては
いけません(偽物としてなら良いです)。 |
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上の写真は下手な偽物の茎仕立です。やはり錆際が一直線になっていますが銘切は努力賞物の上手さです。
ですが正真として買っては絶対にいけません。 |
下はおよそ同時代(江戸時代前中期)に作刀された刀の茎です。
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左の写真は上と錆際を比べて頂くと錆が区方に入り
込んでいてねっとりした良い色の錆がしっかりと
付いています。この錆際と色を頭に叩き込んで
二度と悔しい思いをしないようにして下さい。
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見分け方の大変に難しい新々刀の錆について追記いたします。(12/07追記)
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左の刀は裏年紀から新々刀とわかりますが上の
刀と錆際を比べて
頂くと錆が区方に入り
込んで
良い色の錆が付き始めています。
これは自然な錆の付き方で良い中心の色だと
判断されます。
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もう一つ新々刀の中心をお見せいたします。かなり違いますが正真の良い中心です。
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上の刀は錆際が一直線になっていますが錆がまだらに付き始めています。慶応年紀の刀のように全面に錆がついてはいませんが
中心の地に出た錆は自然な錆の付き方で良い中心の色だと判断されます。新々刀はこういうものが多く判断が難しいのです。
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3. 在銘偽物は鑢目が乱れた物が多い。
刀工の切銘の深さとその周りの鑢の深さのバランスが悪いなどです。
古い刀などで後銘を切ると茎の鑢目は消えそうなのに銘だけしっかり見え銘の底の錆色が違ったりします。
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左の中心の刃側部分(黄色の長円部分)をご覧下さい。
茎の上の朽ち込みすべてが薬品によるものです。
また鑢目の乱れから偽物の匂いがぷんぷんいたします。
さらには黄色二つの小丸部分の赤錆を見れば疑惑は確信に変ります。 |
4. 総じて錆や変形を含めて茎の状態の悪いものはご注意ください。
茎を削って別の刀工銘を切り直すなどの細工をして錆付けの薬品を使っています。
中には朽ちて凹んだようにみせて巧妙に時代を錯誤させるものもあったりします。
軍装に入れるために名刀の茎を変形させて使った場合もありますが多くはありません。
簡単に見分けられるのはガンブルーの青黒っぽい色とすっぱい匂いです。(10/29追記)
今はそんな安っぽい手法ではなく新手の古い良い錆風の物などもあります。
基本的に匂いは重要ですので茎を握った後で手の匂いをこっそりかいでみてください。
見本は3.に掲げた画像をご覧ください。
5. 金象嵌銘は現代物では金が安くなっているため太くしっかり茎に切入ってあり鑢もきっちりかかっています。
限りなく細くかつ茎の表面から錆におされて少し浮いているものは時代のものとおおよそ判断できますが
金が安い現代は中心に細く難しい象嵌用の溝を掘る必要がないので幅広く太く金が入っている物が多いのです。(11/15追記)

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金象嵌の良い標本を載せますのでご覧ください。
これは江戸後期の金象嵌です。細いと云う程では
ないですが鑢もきっちりとかかっています。
もし見た目にこれ以上象嵌が太い場合は現代に
入れたと判断して頂いた方が間違いがありません。 |
6. 中心を掴んで刀を振ってみると手の平に違和感を感じる。
中心は刀身の中で柄にきっちり収まっていますので柄を傷めないように丸みを持って作られているのです。
それが手の平で握ったときに痛いと感じるようなら何か後で加工を施した可能性が高いです。
これは殆どの刀剣商は絶対に許してくれませんからご自分の刀でお試し下さい。
7. 偽物ではありませんが再刃の刀についての項を追加いたします。(12/14追記)
日本刀にとって非常に繊細な部分でして私などが軽々しく言ってはいけないのかもしれませんが
明かに再刃とわかる物は以下のようなものですのでご注意下さい。
しかし、再刃される刀はだいたいは鍛えが良い証拠でもありますから決して避けて通れませんが
やはり実用刀(居合刀など)でない美術刀剣としては価格に是非とも反映させて然るべきでしょう。

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基本的に中心には鍛え割れはありません。何故なら中心は焼きの入っていない生鉄の状態だからです。黄色い丸をご覧下さい。
上の中心のようにヒビや浮き上がったようにに見える鍛え割れがあったとしたら焼きが入ったという事を意味しています。
そうです、火にかかったという事です。
その刀に健全な刃(多くは直刃にされるそうです)が付いていたらまず再刃です。
さらによく観察して下さい、砥ぎ減った刃区に比べて刃幅が広かったらご注意ください。 |
皆様、是非適当な価格で出来良い偽物を手に入れ日本刀を楽しんでください。
でも、適当な価格で売ってくださる刀剣商さんはないでしょうね〜。
この章は写真を含めて随時新しい情報を更新して参ります。
こういう情報の公開をするとこれを上回る新しい技術が次々に生み出されるので本当に
いたちごっこになってしまうのですが現在存在するものに引っかからないだけでも少しは
お役に立つことを信じて業界の恥部のほんの一部をお見せするものです。
現物写真は手に入ったものから順次、掲載を予定しておりますのでお待ちください。
(店主敬白) |